エコロヴァルツの成長と山田隆彦助手の柔軟な教育方針|安田記念2025
エコロヴァルツの成長と山田隆彦助手の柔軟な教育方針について詳しく解説。安田記念2025に向けた準備と期待を探る。

エコロヴァルツの成長と山田隆彦助手の柔軟な教育方針
エコロヴァルツは昨年の牡馬3冠レースで皐月賞7着、ダービー8着、菊花賞9着と皆勤し、近3走の安定感が光ります。3走前のディセンバーSでは3番手から横綱相撲で後続をねじ伏せ、前々走の中山記念ではシックスペンスの末脚に屈して鼻差2着ながらも勝ち馬と同タイムのコースレコードで走り切りました。昨年マイルCS覇者で次戦のドバイターフを制したG12勝ソウルラッシュ(3着)に先着するなど、実力を見せつけています。
前走の大阪杯では10番人気と伏兵扱いでしたが、山田隆彦助手は「今の充実ぶりなら絶対に人気より上位に来ると思いました。勝ち負けは別としても、いい勝負ができる」と自信を持って送り出しました。中団から差して4着と人気以上の健闘を見せ、勝負どころで不運の落鉄がありながらも勝ち馬ベラジオオペラと0秒3差という力を示しました。
山田助手の教育方針
山田助手がこれまで担当した馬は牝馬が大半を占めます。牡馬と牝馬の大きな違いは気性で、前者は多少厳しくてもしっかり教育しながら信頼関係を築き上げていくもの。対して後者は繊細でやり過ぎてしまうと逆効果になり、メンタルが崩れ、立て直すのに時間がかかります。牝馬は機嫌を損ねないよう、お嬢さまのように接するのが基本です。
この経験が牡馬のエコロヴァルツの教育にも役立っています。「基本は悪さをしないので手はかからないけど女の子のように繊細で怖がりな部分があって、たまに注意をするとそっぽを向いたりする。だから、あまり怒り過ぎないように心がけています」と山田助手は語ります。競走馬は壊すのは簡単ですが、つくるのは大変です。2~3歳時は気性難で知られ、そのもろさが実戦に影響することもありましたが、近走は以前と見違えるほど安定感のあるレース運びを見せています。
追い切りと調子
ここ2走と同じく1週前追いはM・デムーロが騎乗し、CWコースで負荷をかけました。前々走の中山記念が6F82秒5~1F11秒7、前走の大阪杯が6F84秒7~1F11秒7に対し、今回は6F80秒4と全体時計を大幅に短縮。ラスト1Fは自己ベストの11秒1を刻みました。春3戦目で気配は上向きです。「元気いっぱいで、あれだけ動けているのは調子がいい証拠」と順調ぶりを伝えつつ、「デビューからあまり馬体重は変わっていないけど、カイバをしっかり食べて調教を積んだ上での数字。3歳の頃と比べると体に張りが出たし、全体的にしっかりしてきた」と手応えをつかんでいます。
牧浦厩舎とM・デムーロのタッグ
これまで牧浦厩舎は地方を含む重賞10勝のうちM・デムーロとのタッグで最多4勝を挙げています。今年はシランケドで3月中山牝馬Sを制し、先月18日のヴィクトリアマイルは7番人気で3着に入りました。好相性タッグが波乱を演じるか。下馬評を覆す準備は整っています。
山田隆彦助手の経歴
山田隆彦助手は1983年8月10日生まれ、広島県広島市出身の41歳です。学生時代に競馬ゲーム「ウイニングポスト」にハマったことがきっかけでこの業界に興味が湧きました。好きな馬はメジロドーベルで、約10年の牧場経験を経て、栗東入りしました。エコロヴァルツ以外の担当馬はパルティクラール、イーブンベターです。
取材後記
山田助手は83年生まれ、広島市出身の41歳です。サッカーに没頭していた中学時代に偶然、書店で見つけた競馬の雑誌で今の仕事を知り、高校卒業後は滋賀県の甲賀ファーム、グリーンウッドなどで経験を積み、29歳でトレセンに入りました。牧浦厩舎ひと筋で10年以上を過ごしています。23年朝日杯FS(2着)は人馬にとってG1初舞台でした。「競馬を見始めた頃から活躍されているユタカさん(武豊)と大舞台に挑めることに興奮しました。自分の担当馬に騎乗してくださることが初めてでしたから(23年8月コスモス賞Vは自身がケガで療養中)。レース後は“この先が楽しみ”とありがたい言葉をくださった。それが励みになっています」と振り返ります。
普段は黙々と作業をこなす職人のような姿が印象的で、「自分はこの世界に入ってから、G1を含めて重賞を勝ったことがないので」と常に謙虚です。年下である記者に対しても分かりやすい言葉で丁寧に受け答えをしてくれます。取材を通して、応援したい気持ちが強くなりました。
(田村 達人)