巨人Ｖ９時代を支えた男・吉田孝司

吉田孝司さん（78）は、巨人のＶ９時代を2番手捕手として支えた名選手だ。入団10年目に正捕手として活躍し、20年にわたる在籍期間を誇る。引退後は編成部門で手腕を発揮し、2012年からはDeNAのスカウト部長として26年ぶりの日本一に貢献した。

キャンプ地での衝撃的な出会い

吉田さんと巨人をつなぐ原風景は、兵庫・明石球場にあった。小学生の頃、巨人の春季キャンプを見に行った吉田さんは、選手たちの後を追いかける日々を過ごしていた。

「練習が終わると、選手は宿舎まで歩いて帰るから、選手の後をついていく。あのジャイアント馬場（正平投手）さんとか、エンディ宮本（敏雄外野手）さんとかがいてね。エンディさんはよく話しかけてくれた。馬場さんの足はこんなに大きくてね。宿舎に行くと脱いだスパイクがあって、こんな大きさで」

吉田さんは両手を50センチほども広げて見せた。2メートルの長身、34センチという足は、子どもの目にはとてつもなく大きく映っていたようだ。

センバツ出場と巨人入団

中学から野球を始めた吉田さんは、捕手として頭角を現し、高校ではセンバツに出場。バッテリーを組んだのは、のちに広島に入団した宮本幸信さんだった。

「宮本さんは内野手で、投手は素人だったんだけど、清水さんが『宮本、おまえ、でっかいから投手やれ』って。でも、コントロールがなくて、10四球で1-0の完封勝ちもあった」

センバツ出場後、吉田さんは巨人に入団。近所に住んでいた青田昇さんの後押しもあり、巨人を選んだという。

「やっぱり巨人が好きだった」

そこから20年、吉田さんは現役として巨人のユニホームを着続けることになる。

引退後の活躍

引退後は編成部門で手腕を発揮し、DeNAのスカウト部長として26年ぶりの日本一に貢献した吉田さん。その観察眼とリーダーシップは、まさに巨人Ｖ９時代を支えた男の面目躍如たるものだ。