天覧試合の緊張と興奮

1959年6月25日、プロ野球初の天覧試合が行われました。昭和天皇と香淳皇后が観戦する中、巨人と阪神の一戦は歴史的な試合となりました。長嶋茂雄選手は、この試合でサヨナラホームランを放ち、プロ野球史にその名を刻みました。

長嶋茂雄の思い出

長嶋選手は、試合前の緊張について語っています。「僕らの時代は、天皇陛下を神様のように思っていた。初めて野球を見に来られる、その前でできるんだと。選手も監督もコーチも、毎日話していた。緊張しっぱなし。ほかではあんな緊張を味わえなかった」と振り返りました。

試合前の準備

試合前、長嶋選手は2試合連続でノーヒットと苦戦していました。前夜は5本のバットを枕元に並べ、床につきました。「いいホームラン、いいヒットをお見せしたいという気持ちが強くて、バットをどれにしようか考えたが、夜は決まらなかった。朝になって真ん中の（米国製）ルイスビルを選んだ」と語っています。

試合のハイライト

試合は東京・後楽園球場で行われ、両陛下をお迎えする審判団と両軍選手がホームプレートを中心に一列に並んでネット裏の貴賓席に向かって、脱帽、最敬礼をしました。天覧試合で、審判団も割り当てが急きょ変更され、内野には明治生まれのベテランがそろいました。球審の島秀之助さんは「仕事上、これは仕方ないが、両陛下に尻を向けてプレーを宣告した」と回想録で振り返っています。

長嶋茂雄の選手人生

長嶋茂雄選手は1936年2月、千葉県臼井町（現佐倉市）に生まれ、ビー玉を布でくるんだ母親手作りのボールで野球を始めました。地元の佐倉一高（現・佐倉高）から立教大を経て巨人に入団。プロ2年目で迎えた世紀の一戦では「4番・サード」でスタメンに名を連ねました。

歴史的瞬間

この試合は、プロ野球の歴史の中で語り継がれる日となりました。長嶋選手のサヨナラホームランは、天皇陛下にいい試合をお見せしたいという選手たちの思いが詰まった瞬間でした。