阪神、甲子園のラッキーゾーン復活をめぐるジレンマ

阪神タイガースは、本拠地・甲子園球場にラッキーゾーンを復活させるべきかでジレンマを抱えている。プロ野球の球場は〝縮小化〟の傾向にある中、国内最高峰の歴史と威容を誇る甲子園をフランチャイズ球場とする猛虎がジレンマを抱えている。

阪神、甲子園のラッキーゾーン復活をめぐるジレンマ

阪神タイガースは、本拠地・甲子園球場にラッキーゾーンを復活させるべきかでジレンマを抱えている。

中日ドラゴンズのバンテリンドームは来季から外野にテラス型観客席を設置することを決定。プロ野球の球場は〝縮小化〟の傾向にある中、国内最高峰の歴史と威容を誇る甲子園をフランチャイズ球場とする猛虎がジレンマを抱えている。

中日が下した大きな決断が猛虎にも波及している。阪神の球団幹部は「バンテリンのテラス席設置には正直ビックリした。これでとうとう明確に〝ピッチャーズパーク〟と呼べる球場は甲子園だけになってしまったね」と声を潜めながら本音を明かした。

かつて「ホームランが出にくい球場」とされてきたみずほペイペイドームには 2015 年からホームランテラス席、ZOZO マリンスタジアムにも 19 年からホームランラグーン席が設置された。日本ハムの本拠地だった札幌ドームも 22 年限りで役目を終え、現在はエスコンフィールドに移っている。

そして、今や甲子園とバンテリンは少数派となった筋金入りの「投手有利、打者不利」の球場となった。各球場でどれだけ本塁打が出やすいかを示す指標「パークファクター」で、昨季の甲子園は 12 球団中最低の「0・62」。バンテリンは次点の「0・69」だった。投手力をストロングポイントとする両チームは、本拠地球場の〝地の利〟とともに攻撃面では大きな干渉も受けてきた。

虎の主砲・佐藤輝は昨オフの契約更改で「言わなければ何も始まらないので」とラッキーゾーンの設置を球団に要求したことを明言。春季キャンプに臨時コーチとして参加した球団 OB の糸井嘉男氏も、現役時代は左打者として何度も浜風に泣かされてきただけに「(佐藤輝が)ラッキーゾーン作ってほしいとか言ってましたけどね。僕も後押しをしたい」と弟分を擁護する姿勢を示した。

1991 年に甲子園からラッキーゾーンが撤廃されて以降、30 本塁打に到達した生え抜き打者が一人もいないこともまた現実だ。

その一方で、右中間と左中間が極端に膨らんだ独特な形状、右翼から左翼方向に吹く強烈な浜風が、歴代の虎投手たちに大きな恩恵を与えてきたことも事実。球団関係者には「テラス席設置となれば、投手陣の成績にも大きな影響を与えることになる。成績が下がればサラリー の低下にも直結するわけだから、そう簡単に決められる話ではない。今後のチーム方針やドラフト戦略も大きく転換する必要が出てくるわけだから」との声もあった。

さらに、プロ野球は興行でもある。近年はチーム成績が好調なこともあり、チケット争奪戦は年々激しくなる一方となっている。別の関係者は「観客席増加につながるテラス席の半恒久的な設置なら営業面のメリットは間違いなく大きいだろう」と語るが「でも、あれだけ美しく歴史のある球場に、今さらテラス席のような〝無粋〟なものを作ってしまっていいのだろうか…」と複雑な思いをにじませている。

今季で開場 101 年目を迎える甲子園。佐藤輝の発言を受けた嶌村球団本部長は「甲子園のあるべき姿が今の球場。今のままで行かせていただく」とラッキーゾーン、テラス席などの設置については明確に否定していたが…。

時代に左右されることなく、伝統ある球場を次世代に継承していくことも阪神球団の責務。同球場が高校野球の聖地であることも意思決定のプロセスを複雑なものにしているが、次の 100 年は、どこへ向かっていくのか――。

次に読むべきもの

浦和実のセンバツ躍進の鍵は打線にあり!変則左腕もさることながら「ソフトボールの打ち方」が勝利を呼ぶ
高校野球

浦和実のセンバツ躍進の鍵は打線にあり!変則左腕もさることながら「ソフトボールの打ち方」が勝利を呼ぶ

浦和実がセンバツで躍進した秘密は、変則左腕の活躍だけでなく、打線の「ソフトボールの打ち方」にあった。その詳細を解説。

逆境を乗り越える大山高校野球部の挑戦:スポーツ推薦導入で新たな一歩
高校野球

逆境を乗り越える大山高校野球部の挑戦:スポーツ推薦導入で新たな一歩

大山高校野球部が部員減少と私学無償化の逆風の中、スポーツ推薦を導入し、新たな戦略で都大会出場を果たすまでの軌跡を紹介。

横浜高のエース奥村頼人、松坂世代以来の秋春連覇を目指す決意と成長
高校野球

横浜高のエース奥村頼人、松坂世代以来の秋春連覇を目指す決意と成長

横浜高のエース奥村頼人が松坂世代以来の秋春連覇を目指す中、彼の成長と決意を紹介。

国学院大・緒方漣、母校横浜の『執念』を胸にソロ本塁打で勝利を決める
高校野球

国学院大・緒方漣、母校横浜の『執念』を胸にソロ本塁打で勝利を決める

国学院大の緒方漣が母校横浜高校の『執念』を胸にソロ本塁打を放ち、勝利に貢献。試合の詳細と彼の奮闘を紹介。

智弁和歌山の新たな挑戦:選抜準優勝から学び、春季大会で成長を目指す
高校野球

智弁和歌山の新たな挑戦:選抜準優勝から学び、春季大会で成長を目指す

智弁和歌山高校野球部が選抜大会での準優勝を糧に、春季大会での新たな成長を目指す挑戦を紹介。

浦和実・辻川正彦監督の甲子園夢:還暦前の第二の青春
高校野球

浦和実・辻川正彦監督の甲子園夢:還暦前の第二の青春

浦和実の辻川正彦監督が還暦前に甲子園での快進撃を振り返り、新たな目標に向けての決意を語る。

2025年春季甲子園:山本昌が注目する6人の3年生投手の未来
高校野球

2025年春季甲子園:山本昌が注目する6人の3年生投手の未来

山本昌が2025年春季甲子園で注目した6人の3年生投手の技術と将来性を詳細に解説。

【高校野球】滋賀の名将・奥村監督と息子頼人の野球人生!横浜での成長と夏の大会への期待
高校野球

【高校野球】滋賀の名将・奥村監督と息子頼人の野球人生!横浜での成長と夏の大会への期待

滋賀県立校の奥村監督とその息子・頼人投手の野球人生に迫る。横浜での成長と夏の大会への期待を語る。

【高校野球】藤枝東の科学野球が春季静岡県大会で快進撃を狙う
高校野球

【高校野球】藤枝東の科学野球が春季静岡県大会で快進撃を狙う

藤枝東高校が20年ぶりに県大会出場を果たし、科学野球で快進撃を目指す。データ分析を活用した戦略が鍵。

千葉ロッテ2軍移転の深層:君津市選定の背景と高校野球への影響
高校野球

千葉ロッテ2軍移転の深層:君津市選定の背景と高校野球への影響

千葉ロッテマリーンズの2軍本拠地が君津市に移転する背景と、その地元高校野球への影響を詳しく解説。

2025年春季東海地区高校野球大会:常葉大菊川、大垣日大、至学館が県大会初戦に挑む
高校野球

2025年春季東海地区高校野球大会:常葉大菊川、大垣日大、至学館が県大会初戦に挑む

2025年春季東海地区高校野球大会が開幕。常葉大菊川、大垣日大、至学館が県大会初戦に臨む。

2025年春季高校野球石川県大会の熱戦が開幕!日本航空石川対七尾の初戦に注目
高校野球

2025年春季高校野球石川県大会の熱戦が開幕!日本航空石川対七尾の初戦に注目

2025年春季高校野球石川県大会が19日に開幕。日本航空石川と七尾の初戦が注目を集めます。

25 年春の東京都高校野球大会、熾烈なシード権争い!
高校野球

25 年春の東京都高校野球大会、熾烈なシード権争い!

25 年春の東京都高校野球大会で各校がシード権を争う。

「横浜高校野球の輝き再び!」
高校野球

「横浜高校野球の輝き再び!」

センバツで優勝した横浜の高校野球チームの強さを総括

【高校野球】窪田洋祐投手、日本一を目指す闘志!
高校野球

【高校野球】窪田洋祐投手、日本一を目指す闘志!

札幌日大の窪田洋祐投手が日本一を目指し、春季全道大会に挑む

Load More

We use essential cookies to make our site work. With your consent, we may also use non-essential cookies to improve user experience and analyze website traffic. By clicking "Accept," you agree to our website's cookie use as described in our Cookie Policy.