伝説の横綱・白鵬が遺したもの 宮城野親方退職で問われる角界の継承問題
歴代最多45度の幕内優勝を誇る元横綱白鵬こと宮城野親方が日本相撲協会を退職。弟子の暴力問題による部屋閉鎖を経て、角界の技術・精神継承に新たな課題が浮上。

不本意な退職劇の背景
2025年6月9日付で宮城野親方(元横綱白鵬)が日本相撲協会を退職。2024年に発覚した旧宮城野部屋の弟子暴行問題が発端となり、部屋閉鎖から伊勢ケ浜部屋への転籍を余儀なくされた経緯がある。協会発表との齟齬が指摘される中での退職劇は、角界のガバナンス改革を再考させる事案となった。
圧倒的記録が物語る伝説
- 幕内優勝45回(歴代1位・2位大鵬に13回差)
- 通算1187勝(史上最多勝利数)
- 横綱在位84場所(在位期間最長記録)
- 全勝優勝16回(前人未到の完全制覇)
2010年シーズンでは86勝4敗、2010年春場所~2011年初場所では88勝2敗という驚異的成績を残し、大関時代から8年半にわたり51場所連続2桁勝利を達成。
技術継承の断絶危機
白鵬が築いた「鬼の勝負哲学」と精密な稽古法:
- 毎朝2時間の基礎運動
- 対戦力士の映像分析
- 四股・鉄砲の反復練習
- 勝負勘を養うシャドー取り
現役引退後は「白鵬道場」で若手育成に注力していたが、部屋閉鎖により指導体系が断絶。角界関係者は「現代相撲の教科書が失われた」と危機感を募らせる。
角界が失ったもの
「土俵の上では鬼になる覚悟こそが横綱の使命」
被災地支援「白鵬杯」創設や八百長問題時の角界支えなど、土俵外での社会貢献も多大。スポーツビジネス専門家は「個人ブランド力で相撲人気を牽引した最後の横綱」と評する。
次世代への課題
協会は「白鵬メソッド」の体系化プロジェクトを発表したが、本人直伝の指導が不可能になった現在、デジタルアーカイブ化と指導者育成プログラムの早期整備が急務となっている。