最後の夏、9人の魂が紡ぐ熱闘 布施工科野球部が遺した不屈の軌跡
閉校目前の布施工科野球部が9人だけで挑んだ大阪大会。元マネージャーの女性教諭監督率いるチームが、人数不足と練習環境の悪条件を跳ね返し、最後まで全力で戦い抜いた熱い軌跡を追う。

7回コールド敗戦に散るも輝く9つの星
「このチームで野球ができて本当に良かった」
2025年7月6日、久宝寺球場に響いた金属バットの音は、閉校目前の布施工科野球部の最後の雄叫びとなった。選手9人・監督1人という最少編成で臨んだ大阪大会1回戦。対伯太戦で7回コールド負けを喫したものの、グラウンドに刻まれたのは数字以上のドラマだった。
逆境を力に変えた練習法
- 全員が全ポジション対応可能な「ユーティリティープレイヤー」育成
- 前監督の残したメニューをAI分析で最適化
- 週3回の早朝特訓で体力・技術を強化
試合の転機となった3大シーン
- 初回先頭打者二塁打:主将・植村壮志の鋭いライナーが右中間を破る
- 6回2死満塁の粘り:代打・山本敦幹の内野ゴロで貴重な1点奪取
- 最終回の守備シーン:遊撃手・高井彪がファインプレーでラストアウト
「数字では負けても、心で勝つ野球を目指した」 渡辺千佳監督(試合後インタビューより)
消えゆく校舎に刻まれた絆
閉校決定後も続けた部室の掃除当番、OBが寄贈した最新トレーニング機器、地域商店街から届く差し入れ...。チームを支えた"見えない力"が、9人のプレーに魂を吹き込んでいた。
次世代に託すバトン:
- 統合先の城東工科への技術継承プロジェクト
- 野球経験のない生徒向け指導マニュアル作成
- 地域クラブチームとの連携強化計画
「この経験は必ず人生の糧になる」と元責任教師の井川氏。消えゆく校名と共に、9人の戦いが新たな伝説として語り継がれる日が来るだろう。